イタリア関連記事②「ピアノ、ピアノ」

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ゆっくり、ゆっくり

せっかちな日本人とは対照的に、時間にルーズな国、イタリア。分刻みのスケジュールに誇りを持つ日本人と違って、そもそも「時間」に対する観念が大きく異なる。日本では朝のラッシュ時に「ただいま1分ほど遅れて運行しています」と電車内でアナウンスが流れることもあるが、イタリア人が聞いたら卒倒するに違いない。

そんなイタリア人たちがしばしば口にするのが「ピアノ、ピアノ(ゆっくり、ゆっくり)」という言葉だ。車や家具、ファッションなどの分野を中心に、個性的かつ質の高い製品を“つくり込む”のはイタリア人が得意とするところ。まさに「ピアノ、ピアノ」の精神が反映している。

日常的に消費される製品をベルトコンベアで流しながら次々と生産するのは、イタリア人にとって、それほど恰好いいものではない。むしろ、たった一つの製品(商品)と向き合い、時間をかけてでもシンプルを極めるまで、とことん余分な要素を削ぎ落とすのがイタリア流。強い独自性があり、時間をかけてでも「作品」と呼べるぐらい納得できるモノをつくってこそ、“やりがい”を感じるのがイタリア人なのだ。

 

日本でもここ数年、独自の技術を磨き上げた製品への評価が高まってきたが、イタリアでそのような「職人気質」が遠い昔から支持されているのは、国民の間で「ピアノ、ピアノ」という長期的な視点を大切にする価値観が広く共有されているからだろう。

グローバル化、デジタル化が急激に進む昨今、老若男女問わず、世界の誰もが忙しくなっているのは事実だろう。だが、多少の時間を節約する利便性のために、例えば、人とのコミュニケーションが失われるなら、昔ながらの価値を守ろうとするのがイタリアだ。だから、イタリアの街中にコンビニエンスストアが広まる姿なんて、ちょっと想像できない。おそらく20年、30年後も、ちょっとコーヒーを立ち飲みする行きつけのバールは健在だろうが、1分、2分を節約するためのお店がイタリア人に支持されることはないだろう。

よく言えば、長期的な視野でコツコツ腕を磨く人たち。悪く言えば、頑なに変化を拒む保守的な人たち。だが、世界が時短に励めば励むほど、イタリア人の「ピアノ、ピアノ」なモノづくりがこれまで以上に人々を魅了する可能性はさらに高まるのではないだろうか。

IDEANNEX株式会社